アヌロム・ヴィロムは、ヨガの伝統の中で最も取り組みやすく、広く実践されているプラーナーヤーマのひとつです。名前はサンスクリット語の「anulom(順方向、自然な流れに沿う)」と「vilom(逆方向、流れに逆らう)」に由来し、左右の鼻孔で交互に呼吸するパターンを表しています。よく似たナーディ・ショーダナ(Nadi Shodhana)と違って、息を止める止息(クンバカ)を含まないため、鼻孔呼吸を初めて試す初心者にとって理想的な入り口です。アーユルヴェーダとヨガ哲学の両方に根ざしたこの技法は、背骨に沿って走る2つの主要なエネルギーの通り道、イダー(Ida)とピンガラー(Pingala)のナーディを流れるプラーナを調和させ、体にバランスを、心に静けさをもたらすとされています。
手順
- 安楽座(Sukhasana)や英雄座(Virasana)など、楽に背筋を伸ばして座ります。背骨を長く保ち、肩の力を抜きます。
- 右手でヴィシュヌ・ムドラー(Vishnu Mudra)をつくります。人差し指と中指を手のひらに折り、親指・薬指・小指は伸ばしたままにします。
- 右手の親指で右の鼻孔を閉じ、左の鼻孔から4カウントでゆっくり深く息を吸います。
- 吸い終わりに薬指で左の鼻孔を閉じ、親指を離して、右の鼻孔から4カウントでなめらかに息を吐きます。
- 左の鼻孔は閉じたまま、右の鼻孔から同じく4カウントで息を吸います。
- 親指で右の鼻孔を閉じ、薬指を離して、左の鼻孔から息を吐きます。これで1ラウンドが完了です。
- これを8〜12ラウンド続けます。吸気と呼気のあいだに間を置かず、安定した均一なリズムを保ちます。
効果
- ヨガの伝統では交感神経と副交感神経のバランスを整えるとされ、穏やかな均衡の感覚がもたらされると感じる人も多くいます。
- 止息の複雑さなしに、安定した呼吸のリズムをつくり、呼吸への気づきを深めます。
- 左右交互の空気の流れによって、鼻の通りがすっきりしたと感じる人は多くいます。
- ゆっくりと意識的な鼻呼吸によって、気持ちが落ち着き、ストレスが軽くなったと感じる人は多くいます。
- 頭の明晰さや集中力を支えると感じる人が多く、勉強や仕事の前の練習として人気があります。
- 止息を伴うナーディ・ショーダナなど、より高度なプラーナーヤーマへの準備になります。
練習のコツ
- 左右どちらの側も、柔らかく均等な呼吸を保ちます。片方の鼻が詰まっているときは、無理に空気を通そうとせず、できるだけやさしく呼吸していれば、通りは少しずつ開いてきます。
- 手はヴィシュヌ・ムドラーのまま、力を抜いておきます。指や手首が緊張すると、呼吸への集中が妨げられます。
- 4カウントが長すぎる、または短すぎると感じたら、スムーズで無理のない呼吸ができるカウントに調整してください。大切なのは、左右で長さが同じであることです。
- 換気のよい静かな場所で行い、気が散らずに内側へ意識を向けられるようにします。
取り入れるタイミング
アヌロム・ヴィロムは非常に応用範囲が広く、一日のほぼいつでも行えます。特に朝のプラーナーヤーマのウォームアップとして効果的で、目覚めたときの散漫なエネルギーから、中心の定まった集中した状態へ移る助けになります。夜に行えば、心身をほぐして、穏やかな眠りへの準備にもなります。
止息を含まないため、アヌロム・ヴィロムは一般的に穏やかな技法とされ、軽いストレスや疲れがあるときでも実践できます。ヨガの呼吸法が初めてで、本格的な技法の強度なしに鼻孔呼吸の恩恵を体験したい方に最適です。たとえ5分でも毎日続けることで、頭の明晰さや感情の安定が支えられると感じる人は多くいます。